#10「あなたのことはそれほど(前編)」
ルーシー「はい、コリンズです」
マネージャー「ああ!コリンズさん!大ニュースですよ!」
マネージャー「実はルーサム監督が手掛けているドラマ作品で急遽ヒロイン役が降板しちゃったんですけど、その代役がコリンズさんに決まりました!」
ルーシー「え!本当に!?」
マネージャー「しかも、驚かないでください?共演する主役があの大物、フィルマン・コルティ氏なんですよ!!」
ルーシー「…」
マネージャー「あれ?…もしもしコリンズさ〜ん??」
—そして撮影当日—
マネージャー「ルーサム監督、コリンズが入りました」
監督「おお!」
監督「お久だねルーシーちゃん。急な依頼になっちゃって申し訳なかった。今日からよろしくね」
ルーシー「こちらこそ、よろしくお願いします!」
フィルマン「やあ、みなさんごきげんよう」
監督「おお、コルティ君。バタバタしちゃってすまなかったが、引き続きよろしくね」
監督「それから今日から代役で入ってくれる子がこの子。ルーシー・コリンズちゃんだ」
フィルマン「…噂はかねがね。どんな演技を見せてくれるのか楽しみだ」
監督「彼女の成長ぶりは凄まじいもんでね。私のイチオシの新人女優さんだ」
フィルマン「ほう…」
フィルマン「まあくれぐれも私の足を引っ張らないようにだけは頼むよ、お嬢さん」
ルーシー「…重々承知しておりますわ、コルティさん」
マネージャー「…え、なにこの雰囲気…」
そして撮影はスタートし、順調に進んでいった。
現場スタッフ「…監督さん、あの新人さんすごいですね。プロ並みの演技じゃないですか」
監督「当たり前じゃないか。ボクが選んだ女優さんだからね」
現場スタッフ「彼女を代役に抜擢したのには何か理由が?さっき見た感じ、なんとなくコルティさんと面識があるようにも見えましたけど…」
監督「…そのうちすぐにわかるよ」
そしてラストシーンの撮影
ルーシー「(セリフ)わたし、まだ怖いんです。あなたにとって、本当に価値のある女なのかどうなのかって…」
フィルマン「(セリフ)まだそんなことを言っているのか、君は」
ルーシー「(セリフ)だってわからないの。あなたはわたしのどこに魅力を感じているの?」
フィルマン「(セリフ)…君の澄んだ瞳さ。君を見ていると吸い込まれそうになる」
フィルマン「(セリフ)私自身もなぜだかわからない。君を見ていると苦しさと同時に安らいだ気持ちに駆られる…」
監督「…」
監督「(…そう言って男は女に口を近づける…)」
ルーシー「…自分勝手な男ね。あなたって」
フィルマン「…!?」
監督「…」
監督「…来たな」
ルーシー「そうやって今まで散々他の女を騙してきたのね。本当に罪な男…」
カメラマン「(…こんなセリフあったっけ…?)」
ルーシー「いいわ。だったら騙されてあげる、ねえおじさま??」
フィルマン「…」
ダンッ!!
フィルマン「…そんな目もするのか…ますます魅力的じゃないか…」
ルーシー「…!!」
ルーシー「…」
フィルマン「…」
監督「ハイカット〜っ!ちょっと休憩入れようか!」
現場スタッフ「はい!では一時休憩としま〜す!」
ルーシー「…」
—休憩時間中—
…
ルーシー「…」
コツコツコツ…
ルーシー「…!!」
フィルマン「…挑発のつもりか?」
フィルマン「随分と面白いことしてくるじゃねえか」
ルーシー「ち…ちちち」
ルーシー「違うわよ!!」
ルーシー「私なりに登場人物の心情を考えてこっちのセリフの方がいいかな〜と思ってやってみただけ!!」
ルーシー「それになによ『挑発』って…た、ただの勘違いよ!」
ルーシー「結局私のアドリブのせいで取り直しになっちゃってみんなに迷惑もかけて、それに…」
ルーシー「…」
フィルマン「…『それに』??」
ルーシー「…なんでもないっ…」
フィルマン「…」
フィルマン「お前、酒は飲めるのか?」
ルーシー「…えっ?」
To be continued…
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